に指定されているシズクガイの生息が確認されており、水質と同様に、底質にも悪化の兆しが見える。
プランクトン調査によれば、湾外北部では珪藻類のスケレトネーマが多く、湾内では、有害赤潮の原因ともなる渦鞭毛藻類のギムノニジウムが僅かながら確認された。魚卵、稚仔魚の調査では、湾内でマイワシ、ウズッポ科が多く、カサゴは湾内外で採取された。由良湾が昔から魚の産卵場所、稚仔魚の成長場所と言われていることを裏付ける結果である。
なお、由良地域の漁業種は、イワシ、タイ、アジ、サバ、サワラ、アナゴ、タチウオなど内海と外海を交流する種類が多い。即ち、由良地区の漁場は、地理的に両海域の境界となっており、主要漁業種の生態面から見て極めて重要な位置を占めていると考えられる。
(2)陸域環境調査結果
陸域の調査は、河川水の水質、地下水水質、山林の植生、岩石の含有成分について行われた。対象地域は由良地域およびその周辺地域である。
水質調査結果によれば、この地域の河川水、地下水には、窒素、リン、有機炭素化合物が近畿地方の平均値に比べて多く含まれることがわかった。この結果から、山林の自然度が高く保たれ、自然林からの栄養塩類が河川、地下水系を通して海域に供給されていることが推測される。また、岩石、地下水中には鉄分、マンガン等の藻場育成に必要な金属イオンの含有量も比較的多いことがわかった。但し、井戸水の中に、塩素、リンの含有量が多く、生活排水、海水の浸透が懸念される。
山林の植生は、照葉樹林帯が広く展開しており、コナラ、クヌギ、ウバメガシ等が多い自然林であるが、近年は薪炭用の間伐も行われなくなり、ウバメガシが優先的になりつつある。山野には、シカ、イノシシが広範囲に亘って棲息しているが、山林の植生の遷移が進む中でこれらの野生動物が人家近くに現れ、作物の食害の発生も報告されている。
(3)海岸線調査結果
由良湾内の海岸線は開発の進展によって人工的であると同時に、僅かに残った自然海岸には空缶、空ビン、プラスティック類の生活系ゴミが山積している。これらのゴミの大部分は大阪湾域を初めとする他の海域からの漂流物と考えられるが、漁港内には地域から投棄されたゴミの停留がかなり見られる。由良町側の海岸では、ムラサキイガイ、カキの付着が見られ、成が島側では、秋季には、干潟にカキの死骸が多く堆積し、底質は硫化鉄によって黒く変色し、硫化水素臭があり、干潟特有の底生生物は見られず、鳥も見られない状態であるが、春季には、この状態は少し回復し、海草、海藻類の繁茂、アサリ等の底生生物の繁殖が見られる。
これに比して、生石一熊田から上灘地区へつながる海岸は、比較的直線的で風波の侵食が激しく、旧道、堤防の破壊跡が見られる。海岸線には直径数mmの礫から50cmを越す岩が存在し、中には直径数mを越える岩もある。海岸に露出する岩、断崖の岩肌には赤く錆びた鉄分を含む堆積岩が見られ、藻場の育成にとっては好条件であると判断される。潮間帯の干山帯には、フノリ、ヒジキ、イワノリ、テングサ等の有用海藻が密生しており、少し深いところでは、カジメ、ワカメ、コンブ等の海中林がやはり密生状態で、極めて良好な藻場を形成している。付着生物は比較的少ないが、干山帯ではイソギンチャク、ツブガイの付着が見られたが、カキ、ムラサキイガイの存在は確認されなかった。この海岸は、大阪湾周辺では陸一海の連続性が保たれた貴重な存在であるといえる。
(4)集落調査結果
由良集落とその周辺環境である由良湾、里山との関係を中心にして集落空間並びに景観の構造を明らかにするため。
?集落の空間構造:地形的特徴、土地・建物利用の特徴、街路構造。
?景観構造:可視不可視領域の特徴、集落内道路から周辺環境への見通しの特徴。
?集落のイメージ:集落及び周辺の山や海について場所や通りの呼び名の特徴、祭事における空間利用からみた集落の構造、住民の認知地図の特徴に関する調査・分析を行った。
その結果、
?由良集落は周囲の自然地形と馴染みの良い構造をなしつつも集落の境界を明確に持っている。
?集落の空間構造は複雑な中にもまとまりの良い秩序がある。
?歴史性や漁業からくる場所の呼び名が豊富であり、祭事の際の物語性の形成に集落の空間を取り入れている。
などの特徴を持つことが明らかとなった。
(5)実態調査結果の総合評価
環境の実態に関する総合調査の結果をTable 1に示す。また、調査結果をもとに由良地域の環境の特徴・問題点
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